「なんだか今日の眉、しっくりこない…」「雑誌の真似をしてみたけど、自分には似合わない気がする」。毎朝鏡の前で、眉メイクに頭を悩ませている方は、決して少なくないはずです。正直に言うと、私も長年この業界にいますが、キャリアの駆け出しの頃は流行の形を追いかけては失敗し、自分の顔にしっくりくる「正解」が分からず、まさに“眉迷子”の状態でした。
多くの人が陥りがちなのは、流行やモデルの眉を、そのまま自分の顔に当てはめようとしてしまうこと。しかし、服や髪型と同じように、眉にも一人ひとりの「骨格」に合った、最も美しく見える形が存在します。それは、あなたの顔の形という、生まれ持った個性を最大限に活かすための、いわば「運命の眉」です。
ここでは、もう二度と眉メイクで迷わないために、あなた自身の顔の形を羅針盤にして、本当に似合う眉を見つけ出すための具体的な方法を徹底的に解説します。感覚や流行に頼るのではなく、理論に基づいたテクニックを知ることで、あなたの表情は驚くほど洗練され、自信に満ち溢れたものに変わるはずです。
1. なぜ顔の形で似合う眉が違うのか
「そもそも、どうして顔の形が違うだけで、似合う眉の形まで変わってくるの?」
これは、私がメイクレッスンで必ず最初にお話しする、最も本質的な問いです。その答えは驚くほどシンプル。ひと言で言うなら、眉は「顔の印象をコントロールするフレーム」だからです。
考えてみてください。どんなに素晴らしい絵画も、額縁が合っていなければその魅力は半減してしまいますよね。額縁が大きすぎたり、装飾が過剰だったりすると、絵画そのものよりも額縁に目がいってしまう。眉もそれと全く同じで、顔の輪郭というキャンバスに対して、眉というフレームがバランスを整える役割を担っているのです。
人の顔の形は、千差万別です。
- 丸顔さんは、ふっくらとした頬の曲線が視線を集めやすい。
- 面長さんは、おでこから顎にかけての縦のラインが強調されやすい。
- ベース顔さんは、フェイスラインのシャープな角度が特徴的です。
このように、顔の形によって、他人が無意識に注目するポイントや、強調されやすいパーツが異なります。そして、眉には、その視線を巧みに誘導し、顔のバランスを錯覚させる力があります。
例えば、眉に角度をつければ、視線は斜め上に誘導され、顔全体がリフトアップしたようなシャープな印象になります。逆に、眉を直線的に描けば、視線は水平に動き、顔の縦の長さをカモフラージュしてくれる。
つまり、自分に似合う眉を見つけるということは、単に眉の形を整える作業ではありません。それは、自分の顔の個性を深く理解し、その魅力を最大限に引き出すための「視線誘導のテクニック」を手に入れることなのです。この原理さえ理解すれば、もう流行に振り回されることはありません。あなたの顔の形こそが、あなただけの美しさを引き出す、最高の道しるべとなるのです。
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2. 丸顔さんを小顔に見せるシャープな眉
ふっくらとした頬が親しみやすく、可愛らしい印象を与える丸顔さん。その一方で、「顔が大きく見えてしまう」「どうしても幼い印象から抜け出せない」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。私がお会いしてきた丸顔のお客様も、多くが「シュッとした大人っぽい顔立ち」に憧れを抱いていました。
そんな丸顔さんの悩みを解決する鍵は、顔の中に「シャープな角度」と「縦のライン」を意識的に作り出すことです。丸みを帯びたフェイスラインの中に、キリッとしたアクセントを加えることで、視覚的な引き締め効果が生まれ、驚くほど小顔な印象を演出できます。
そのための最適な眉の形と、避けるべき眉の形には明確なポイントがあります。
最適な眉:眉山を意識した長めの「アーチ眉」
- ポイント:眉の中間から眉尻にかけて、きちんと角度(眉山)を作ること。この眉山が、丸い輪郭の印象を断ち切り、顔に立体感と奥行きを与えてくれます。
- 避けるべき眉:角度のない「平行眉」や、眉山が曖昧な短い眉。これらは顔の横幅をさらに強調してしまい、のっぺりとした印象につながりかねません。
以前、いつも平行眉にしていた丸顔のお客様に、ほんの少しだけ眉山の位置を高く設定し、眉尻をいつもより数ミリ長く描くことを提案したことがあります。ご本人は「こんなに角度をつけて大丈夫?」と不安そうでしたが、仕上がりを見た瞬間、「顔が全然違う!痩せたみたい!」と驚きの声を上げられました。その数週間後、「周りの友達から『最近きれいになったね』と言われることが増えた」と、嬉しそうに報告に来てくれたことは今でも忘れられません。
丸顔さんは、眉山を作ることを恐れないでください。その小さな角度が、あなたの魅力を最大限に引き出し、理想の小顔へと導いてくれる、最も強力な武器になるのです。

3. 面長さんの顔の長さをカバーする平行眉
知的で落ち着いた、大人っぽい雰囲気が魅力の面長さん。その一方で、「顔の長さがコンプレックス」「少し間延びして見えるのが悩み」といった声をよく耳にします。パーツが整っている方が多いからこそ、全体のバランスをどう取るかが、美しさをさらに引き出すための重要なポイントになります。
面長さんの印象を劇的に変えるアプローチは、丸顔さんとは正反対。顔の中に「水平のライン」を強調することで、縦に長い印象を分断し、顔の余白を効果的に埋めることです。
この役割を完璧に果たしてくれるのが、角度をつけすぎない、なだらかな「平行眉」です。
なぜ平行眉が効果的なのか?
平行眉は、眉頭から眉尻までがほぼ一直線になるため、見る人の視線を自然と横方向に誘導してくれます。それは、広大なキャンバスに一本の水平線を描くようなもの。その水平線が空間全体に安定感をもたらすように、平行眉は顔の縦の長さを自然にカバーし、バランスの取れた印象を与えてくれるのです。
- 避けるべき眉
アーチの強い眉や短い眉。これらの眉は顔の中央に視線を集めてしまい、頬から下の余白がより一層目立ってしまう可能性があります。せっかくの長所である上品な雰囲気を、少し寂しげな印象に変えてしまいかねません。 - 美しく描くためのコツ
眉下のラインをまっすぐに整えることです。眉上のラインは完全に直線にするのが難しい場合でも、眉下のラインをコンシーラーやアイブロウペンシルで丁寧に整え、直線的に見せるだけで、驚くほど洗練された平行眉が完成します。
私が担当した面長のお客様で、ご自身では「キリッとしなければ」と思い込み、角度のついた細い眉を長年続けていた方がいました。思い切って眉山をなだらかにし、少し太さのある平行眉にデザインを変えたところ、「すごく優しい印象になった」「きついと言われることがなくなった」と、ご自身の新しい表情に大変喜んでいただけました。
顔の長さをコンプレックスに感じる必要はありません。平行眉という魔法の水平線を手に入れることで、その悩みは、誰もが羨む上品で穏やかな魅力へと変わるのです。
4. ベース顔さんの印象を和らげるアーチ眉
フェイスラインがシャープで、意志の強さを感じさせる知的な印象のベース顔さん。その一方で、エラのラインが気になるあまり、「顔が大きく見えないか」「男性的に見られていないか」と心配している方もいらっしゃいます。その角張った輪郭は、時として「少しキツそう」という印象を与えてしまうこともあるかもしれません。
そんなベース顔さんの魅力を最大限に引き出すためのキーワードは、「曲線による中和」です。フェイスラインの直線的な印象を、眉に優雅な曲線を持たせることで、顔全体の印象を驚くほど柔らかく、女性らしいものへと導くことができます。
その主役となるのが、眉山から眉尻にかけて、なだらかなカーブを描く「アーチ眉」です。
アーチ眉がもたらす効果
角のあるシャープなフェイスラインと、眉の柔らかな曲線。この相反する要素が組み合わさることで、お互いの特徴が調和し、洗練されたエレガントな雰囲気が生まれます。それはモダンで直線的な部屋に、一つだけ優雅な曲線を持つオブジェを置くようなもの。その曲線が、空間全体に温かみと奥行きを与えます。
- 避けるべき眉
輪郭のシャープさを強調するような直線的な平行眉や、眉山が角張った上がり眉。これらは顔の「角」をさらに増やしてしまい、硬く、近寄りがたい印象を与えてしまう危険性があります。 - 美しいアーチ眉を作るポイント
- 眉山をあまり角張らせず、丸みを持たせるように意識する。
- 眉尻に向かって、細く、すっと消えていくような繊細なラインを心がける。
この滑らかなカーブが、気になるエラの部分から視線をそらし、顔の上半分に注目を集めてくれます。
以前、キャリアウーマンのベース顔のお客様で、「仕事ができるように見られたい」と、長年キリッとした直線眉を貫いていた方がいました。しかし、プライベートではもっと親しみやすい印象になりたいというご相談を受け、思い切って優しげなアーチ眉をご提案しました。最初は見慣れないご自身の姿に戸惑っていましたが、後日、「職場の後輩から、最近話しかけやすくなったと言われました」と、満面の笑みで教えてくれました。
ベース顔さんのシャープさは、決して隠すべき欠点ではありません。アーチ眉という優雅な曲線を味方につけることで、その知的さはそのままに、人を惹きつける温かみをプラスすることができるのです。
※関連記事:【初心者向け】自分に似合う眉がわかる!眉メイクレッスンの選び方と内容
5. 逆三角形さんのための優しい眉デザイン
おでこが広く、顎にかけてのラインがシュッとシャープな逆三角形さん。その洗練された輪郭は、クールで都会的な印象を与えます。しかし、その一方で、「ハチが張って見えてしまう」「頬骨が気になる」「顎が尖っているせいで、キツい印象を持たれがち」といった、特有の悩みを抱えていることも少なくありません。
逆三角形さんの顔のバランスを整えるためのアプローチは、視線を顔の上部(おでこやハチ)から巧みにそらし、ややもすると寂しく見えがちな顔の下半分に、視覚的な安定感をもたらすことです。
この繊細なバランス調整を得意とするのが、眉山をやや外側に作り、長さを出しすぎない「ナチュラルなアーチ眉」です。
最適な眉:ナチュラルなアーチ眉
- 眉の長さと眉山の位置がポイント
眉を長く描きすぎると、おでこの広さやハチの張りをかえって強調してしまいます。基本よりも少し短めを意識し、眉山を顔の中心から少し外側に設定することで、こめかみに向かう視線の流れを緩やかにし、気になる部分を目立たなくさせる効果があります。 - 避けるべき眉
眉頭から眉山までが一直線に上っていくような、角度の急な上がり眉。これは、視線をさらに顔の上部へと引き上げてしまい、ハチ張りを助長する可能性があります。
もう一つのテクニック:ふんわりとした眉頭
優しい印象をプラスするために、眉頭を濃くしすぎず、パウダーでふんわりと仕上げることも効果的です。眉頭がくっきりしていると、眉全体の印象が強くなりすぎてしまいます。
- 眉頭は淡く
- 眉の中央から眉尻にかけて徐々に濃くなる
このグラデーションを意識することで、表情に自然な立体感と柔らかさが生まれます。
逆三角形さんのシャープな輪郭は、本来とても魅力的です。眉で顔の上半分の印象を少しだけ「引く」ことを覚えるだけで、そのクールな美しさに、親しみやすい優しさが加わり、あなたの魅力はさらに輝きを増すでしょう。

6. 眉の太さ・長さ・角度で印象をコントロール
これまで、顔の形という「土台」に合わせた基本的な眉の形について解説してきました。しかし、本当に自分らしい眉メイクをマスターするためには、もう一歩踏み込んだ知識が必要です。それが、眉の「太さ」「長さ」「角度」という3つの要素を自在に操るテクニックです。
これらは、料理における塩・こしょう・スパイスのようなもの。基本のレシピ(顔の形に合った眉)を理解した上で、これらの調味料を少し加減するだけで、同じ眉でも全く違う表情を創り出すことができます。
1. 眉の「太さ」で年齢感を操る
眉の太さは、顔の印象年齢を大きく左右する重要な要素です。
- 太眉: 若々しく、ナチュラルで、親しみやすい印象を与えます。目力を強調する効果もあります。
- 細眉: クールで、シャープ、洗練された大人っぽい印象を与えます。表情がすっきりと見えます。
大切なのは、ご自身の目の大きさとのバランスです。一般的に、目がぱっちりと大きい方は少し太めの眉が、切れ長で涼しげな目元の方は少し細めの眉が似合うとされています。今のトレンドはやや太めのナチュラル眉ですが、自分の骨格やなりたいイメージに合わせて微調整するのが正解です。
2. 眉の「長さ」で品格を演出する
眉の長さは、顔の余白をコントロールし、与える印象の「格」を決めます。
- 長い眉: 上品で、落ち着いた、知的な印象を与えます。顔の横幅をカバーし、小顔に見せる効果も期待できます。
- 短い眉: アクティブで、キュート、若々しい印象を与えます。顔のパーツを中心に寄せて見せる効果があります。
一般的な眉の理想的な長さは、「小鼻の脇と目尻を結んだ延長線上」と言われています。しかし、これもあくまで基本。例えば、顔の横幅が気になる方は少し長めに、逆に求心的な顔立ちに見せたい場合は少し短めに描くなど、戦略的な調整が可能です。
3. 眉の「角度」で意志を表現する
眉の角度は、その人の感情や意志を表現する、最もドラマチックな要素です。
- 角度がある(上がり眉): 意志が強く、知的で、エネルギッシュな印象を与えます。顔全体を引き締めるリフトアップ効果もあります。
- 角度がない(平行眉): 穏やかで、優しく、リラックスした印象を与えます。トレンド感があり、優しい雰囲気を醸し出します。
例えば、「今日は大事なプレゼンがあるから、少し角度をつけて意志の強さを演出しよう」「週末はリラックスしたいから、角度をつけずに穏やかな平行眉にしよう」といったように、その日の気分やTPOに合わせて角度をコントロールできるようになれば、あなたはもはや眉メイクの上級者です。
これらの3つの要素は、独立しているわけではありません。太くて短い平行眉、細くて長いアーチ眉など、組み合わせは無限大です。自分の顔の形に合った基本の眉をマスターしたら、ぜひこれらの「調味料」を使って、あなただけのオリジナルな表情を創り出す楽しさを発見してください。
※関連記事:【初心者向け】アイブロウデッサンの始め方|美眉を描くための基本練習
7. 自分の顔タイプを簡単セルフチェック
ここまで読み進めて、「自分の顔の形が、実はよく分からない…」と感じている方もいるかもしれませんね。大丈夫です。ここでは、ご自宅で簡単に、そして客観的に自分の顔タイプを診断する方法をご紹介します。必要なのは、スマートフォンと少しの時間だけです。
準備するもの
- 髪を留めるためのヘアバンドやピン
- スマートフォン
【セルフチェックの手順】
- 準備: まず、前髪やサイドの髪が顔にかからないよう、ヘアバンドなどですっきりとまとめ、顔の輪郭が完全に見える状態にします。
- 撮影: スマートフォンを顔の正面に固定し、真顔で、できるだけ無表情な状態で写真を撮ります。この時、上から見下ろしたり、下から煽ったりせず、レンズが目線の高さに来るようにするのがポイントです。
- 分析: 撮影した写真を見ながら、以下の2つの長さを比較します。
- A(顔の縦の長さ): 髪の生え際の中央から、顎の先端まで
- B(顔の横の長さ): 頬骨の一番高い部分を、左右まっすぐに結んだ長さ
このAとBの比率、そしてフェイスラインの形状から、あなたの顔タイプを診断します。
【顔タイプ診断結果】
- 丸顔タイプ
- A(縦)とB(横)の長さが、ほぼ「1:1」に近い。
- 頬がふっくらとしていて、フェイスライン全体に丸みがある。
- 顎のラインがシャープというよりは、曲線的。
- 面長タイプ
- A(縦)の長さが、B(横)の長さよりも明らかに長い。
- 顔の横幅に比べて、縦の比率が大きい。
- 頬の面積が広く、全体的にすっきりとした印象。
- ベース顔タイプ
- A(縦)とB(横)の長さが、比較的近い。
- エラの部分がしっかりとしており、フェイスラインが直線的。
- おでこの横幅と、エラの横幅が近い。
- 逆三角形タイプ
- おでこや頬骨など、B(横)の幅が最も広い。
- 顎に向かってフェイスラインがシャープになり、顎先が細い。
- 顔の上半分に比べて、下半分が華奢な印象。
いかがでしたか?もちろん、人の顔はこれらのタイプにきれいに分類できるわけではなく、複数の要素を併せ持っている場合がほとんどです。しかし、自分の顔がどのタイプの傾向が最も強いのかを客観的に把握することが、似合う眉を見つけるための、揺るぎない第一歩となるのです。
※関連記事:【眉の整え方】初心者でも失敗しない!黄金比率で美眉を手に入れる方法
8. 骨格に合わせたオーダーメイドの美眉
顔の輪郭のタイプを理解することは、似合う眉を見つけるための大きな一歩です。しかし、本当の意味であなただけの「オーダーメイド眉」を手に入れるためには、さらにミクロな視点、つまりあなた自身の「骨格」と向き合うことが不可欠になります。
ここで最も重要になるのが、「眉丘筋(びきゅうきん)」の存在です。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、眉丘筋とは、眉毛が生えている部分の土台となっている、額の筋肉のことです。私たちが驚いたり、考え込んだりする時に、眉を動かしますよね?その動きを司っているのが、この眉丘筋です。
なぜこの筋肉が重要なのでしょうか。それは、この眉丘筋の自然なカーブや盛り上がりに沿って眉を描くことで、表情が動いた時に、眉が顔の動きと一体化し、驚くほど自然に見えるからです。逆に、この筋肉を無視して、全く違う位置に眉を描いてしまうと、無表情の時は綺麗に見えても、笑ったり話したりした時に、眉だけが顔の上で浮いているような、不自然な印象を与えてしまいかねません。
自分の眉丘筋の見つけ方
鏡の前で、思い切り目を見開いて、驚いた顔をしてみてください。その時に、眉のあたりでポコッと盛り上がる部分があるはずです。それが、あなたの眉丘筋。この筋肉のアーチが、あなたにとって最も自然で、美しく見える眉のガイドラインなのです。
そして、骨格を語る上でもう一つ欠かせないのが、古くから知られる「眉の黄金比」です。
- 眉頭: 小鼻のくぼみの真上あたり。
- 眉山: 黒目の外側の縁から、目尻までの間の真上あたり。
- 眉尻: 小鼻の脇と目尻を、一直線に結んだ延長線上。
この黄金比は、多くの人にとってバランスが良く見える、非常に優れた指標です。しかし、私が現場で最も大切にしているのは、この黄金比はあくまで「万能の設計図」であって、「絶対のルール」ではない、ということです。
例えば、目が離れ気味の方は眉頭を少し内側に寄せたり、顔の横幅をカバーしたい方は眉尻を少し長めに設定したり。顔の形、骨格、そして眉丘筋の動き。これら全てを総合的に判断し、黄金比をベースにしながらも、あなたのために少しだけ「崩す」こと。それこそが、プロが行う本当の眉デザインであり、究極のオーダーメイドなのです。

9. なりたいイメージ別(可愛い・クール)の眉の形
顔の形や骨格から似合う眉の基本を導き出す方法をマスターしたら、最後はあなたの「なりたい自分」を眉で表現するステップです。眉は、顔の印象を決定づける重要なパーツ。その日のファッションや気分、会う相手に合わせて、自由自在にイメージを操ることができれば、メイクはもっと楽しく、戦略的なものになります。
ここでは、代表的な2つのイメージ、「可愛い・優しい」と「クール・知的」を例に、眉で印象をコントロールする具体的なテクニックをご紹介します。
「可愛い・優しい」イメージを演出したい時
親しみやすさや、柔らかな女性らしさを表現したい日にぴったりの眉デザインです。
- 形:
平行眉、またはなだらかなアーチ眉が最適です。眉山を強調せず、全体的に丸みのある優しいラインを意識します。 - 太さ:
少し太めに描くことで、若々しくナチュラルな印象がアップします。 - 色:
明るめのブラウン系のアイブロウパウダーを使い、ふんわりと仕上げるのがポイントです。髪色よりワントーン明るい色を選ぶと、一気に垢抜けた印象になります。 - ポイント:
眉頭は特に淡くぼかし、輪郭をくっきりと取りすぎないこと。眉全体が柔らかなグラデーションになるように仕上げましょう。
「クール・知的」なイメージを演出したい時
ビジネスシーンや、少しモードなファッションを楽しみたい日に。意志の強さと洗練された雰囲気をまとえます。
- 形:
上がり眉、または眉山をしっかりと作ったシャープなアーチ眉が効果的です。眉尻に向かって、すっと細くなるラインを描きます。 - 太さ:
やや細めから標準の太さが、すっきりとした印象を与えます。 - 色:
ダークブラウンやグレー系のアイブロウペンシルやリキッドを使い、輪郭をはっきりと描きます。キリッとした印象が際立ちます。 - ポイント:
眉山を頂点として、眉尻は短めに、すっきりとシャープに終わらせること。眉下のラインをストレートに描くと、より知的さが強調されます。
面白いことに、これらのテクニックは、あなたの顔の形に関わらず応用が可能です。
例えば、「丸顔だけど、今日はクールに見せたい」という場合。基本となるアーチ眉の角度を少しだけキリッとさせ、眉尻をシャープに描くだけで、可愛らしさの中に凛とした表情が生まれます。「面長だけど、優しい雰囲気にしたい」なら、平行眉をベースに、眉の色を明るいブラウンのパウダーでふんわり仕上げれば、知的さと柔らかさが両立します。
基本の形は、あなたの魅力を最大限に引き出す「土台」。そこに、なりたいイメージという「味付け」を加える。この応用ができるようになれば、あなたはもう、どんな自分にでもなれるのです。
10. プロに相談して最高の眉を見つける
ここまで、ご自身で似合う眉を見つけるための様々な理論とテクニックについて解説してきました。これらの知識を実践すれば、あなたの眉メイクは間違いなく、これまでとは比べ物にならないレベルへと進化するはずです。
しかし、それでもなお、「左右の形がどうしても揃わない」「自分の骨格に本当に合っているのか、客観的な意見が欲しい」といった壁に突き当たることもあるかもしれません。そんな時、ぜひ検討してみてほしいのが、一度、眉の専門家に相談してみるという選択肢です。
アイブロウサロンなどでプロの施術を受けることには、セルフケアだけでは得られない、計り知れないメリットがあります。
- 客観的な視点でのデザイン提案:
自分ではコンプレックスだと思っている部分も、プロから見れば活かすべき個性かもしれません。骨格や筋肉の動き、顔全体のバランスを総合的に判断し、自分では思いつきもしなかった「最高の眉」を提案してくれます。 - ミリ単位での正確な左右対称:
眉の左右差は、多くの人が抱える悩みです。プロは、ミリ単位で高さや角度を調整し、限りなくシンメトリーに近い、バランスの取れた眉をデザインしてくれます。 - 自己処理が格段に楽になる:
専門的な技術(ワックス脱毛など)で不要な部分の毛を処理してもらうことで、美しい眉のガイドラインができます。これにより、日々の自己処理は驚くほど楽になり、メイクの時間も大幅に短縮されます。 - 自分だけの「設計図」が手に入る:
プロに整えてもらうことは、ゴールではありません。それは、あなただけの「美眉の設計図」を手に入れるための、最高のスタートです。施術後に、どう描けばその形を再現できるのか、具体的なアドバイスをもらうことで、翌日からのセルフメイクの質が劇的に向上します。
プロに相談することは、決して特別なことではありません。それは、美容院で髪を切ってもらうのと同じように、自分の魅力を最大限に引き出すための「賢い自己投資」です。もしあなたが長年、眉の迷路から抜け出せずにいるのなら、一度プロの力を借りて、新しい自分の可能性の扉を開いてみてはいかがでしょうか。
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眉は、あなただけの最高のアクセサリー
これまで、顔の形という地図を頼りに、あなただけの「運命の眉」を見つけるための旅をしてきました。丸顔さんにはシャープなアーチを、面長さんには穏やかな平行線を。それぞれの個性を輝かせるための、理論に基づいた答えが、きっと見つかったはずです。
しかし、忘れないでください。その理論は、あなたを縛るためのルールではありません。それは、あなたがもっと自由に、もっと美しくなるための「翼」です。
顔の形に合った基本の眉をマスターしたら、次は、太さ、長さ、角度といったスパイスを加えて、なりたい自分を自由に表現してみてください。眉メイクは、欠点を隠すための作業ではなく、あなたの魅力を、あなたらしく表現するためのクリエイティブな自己表現なのです。
もう、鏡の前でため息をつく必要はありません。今日手に入れた知識は、一生ものの財産です。明日からの眉メイクが、昨日よりも少しでも楽しいものになり、あなたの毎日がさらに自信に満ちた輝かしいものになることを、心から願っています。
